2016年3月30日水曜日

publons - 査読履歴を業績化する

科学論文の世界で、査読(ピアレビュー)という手続きは、論文が出版に値するかどうかを評価する上で根幹をなすもので、大変に重要である。

研究者は、自分の論文原稿を投稿した際には他の研究者から査読を受け、また、他の研究者の論文が投稿されジャーナルの編集者から割り振られれば、それを査読することになる。
一本一本に直接的な関係はないのだが、論文投稿と査読とは仕組みとして、表裏一体ともみなせる。

しかし、投稿論文は受理され出版されれば「業績」として華々しくリストアップされるものの、年に何本、月に何本査読しようと、その活動を評価する仕組みはそれほど多くなく、自主的にCVにどの雑誌で何回査読したかなど、自身の査読履歴を記載するのが精一杯なところだった。

Publonsは、そうした研究者の「隠れた」活動を、効率的・効果的にし、また正当に評価するための仕組みを提案している。

Publonsの創設者にインタビュー:「科学加速化ミッション」 - Editage Insights 

Publonsでは自身が行った査読を、ある程度の証拠(たとえばThank you for your review のeメールなど)をもって正確に記録していくことができる。
これにより、今まで自分がどれくらいのペースで査読を行ってきたのか、などを振り返ってみることも可能になるのだ。

そこで、Publonsを利用し、最近2〜3年の自分の「査読活動」を振り返ってみた。

https://publons.com/author/866252/yuichi-hayakawa#stats

数では、平均的に月1〜2本といったところだろうか。
ただ、Publonsは今のところ国際英文誌だけが対象となっているようであり、和文誌の査読や、本のチャプタの査読などは残念ながら含められていない(ので、実際はもう少しだけ多い)。

もっとも、数だけで「正しい」評価ができるかどうかは別問題で(論文のそれと同様)、たとえば査読の内容によっては比較的軽いものもあれば、ヘビーで大変に時間を費やすものもある。
ともあれ、数だけでもひとつの指標にはなるかもしれない。何も無いよりはマシである。

いずれにせよ、これが多いのか少ないのかといったことですら、よく分からないというのが現状である。
Publonsに登録された他の研究者の人たちの数字を見ると、自分はまだまだヒヨッ子と言えるのかもしれないが・・・
もっとも、分野が異なれば状況もまったく異なるだろうし、一概に比較はできそうにない。
もう少し近い分野での例も知りたいところ・・・

こうした査読履歴が、一つの業績として認められるようになれば、査読を受ける際にももっと「喜んで!」となるかもしれないが、そんな日は来るのだろうか・・・

2015年4月23日木曜日

J-RAPID meeting – Eastwood in Quezon, the Philippines

欧州からの東京乗換、フィリピン行き。
ウィーンを出た翌日にはマニラに降り立った。 

事前調査をあまりしていなかったのだが、マニラの国際空港は市内への現実的なアクセス方法がほぼタクシーしかなく、その評判はよろしくない。
「定額」をうたうタクシーであっても、ある程度強い意志を持って交渉しないと、とんでもない金額を支払わされるはめになるようだ。。

ともあれ、無事にケソン市イーストウッドに到着。 高層ビルの立ち並ぶビジネス街である。

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しかし、一歩外に出てみると、フィリピン「らしい」風景も目にする。

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今回、日本-フィリピンの国際緊急共同研究・調査支援プログラムにかかる研究報告会へ参加した。
台風Haiyan(フィリピン名Yolanda)による災害・復興が、本プログラムの主要課題。
様々な分野の研究者が一堂に会し、その取り組みが報告された。

交流会の余興は、フィリピン伝統の音楽やダンス。
その歴史からか、スペイン的な要素も多くみられた。
アジアとラテンの絶妙な融合。

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2015年4月13日月曜日

EGU 2015 General Assembly – Vienna, Austria

3年ぶりのウィーン。

日曜はちょうどウィーンシティマラソンで、ランナーがそれぞれの思いで街を駆け抜けていた。

交通規制の恩恵で、車道のど真ん中でも静かな風景。

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今年のEGUは参加者12,000人ほどだったとのこと。
数年前からあまり増加はしていない様子。

今回、諸々の都合により、1日だけの参加となってしまった。
が、1日だけでも、濃密なディスカッションで有意義な時を過ごせた。
いろんな視点からの意見を頂戴することの大切さを、改めて実感。

EGUでも高解像度地形情報は一大潮流になっている。
TLSやUASといったツールは、もはや当たり前。
精度検証を超えて、そのデータをどう活かすか・・・そこはまだ発展途上だが、皆が注目している。

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ちなみにこのポスターボードの、やや斜に構えた配置は、よくできた構造だった。
発表者に立つスペースを与えつつ、聴く人たちの塊が通路を遮ることも少ない。
ちょっとした荷物(コップやPCやタブレット)を置く台も、有効活用できた。

EGU 2015 - Spherical Image - RICOH THETA



2012年7月31日火曜日

都会のど真ん中で、川遊び。

子どもの頃、「いつか東京の川でも水遊びができるようになったらいいのに」と、増水後にヘドロの溜まった新河岸川の親水公園の岸辺で思った。
今、その夢が叶う。

新宿区高田馬場2丁目。西武新宿線の走るそのすぐ下に、神田川親水テラスがある。
2年ほど前から、新宿区が夏季限定でここを開放している。

東京の都市河川は高度経済成長期に汚染が進み、多くの小河川が暗渠化された。
一時は、神田川や石神井川レベルの大きな川もすべて暗渠化される方策も打ち出されたほどだ。

この「臭いものには蓋を」から脱却し、水環境を整え、河川を再生する方向に流れが変わったのは昭和後期に入ってから。
その後、暗渠化した区間は緑道としたり、場所によっては暗渠を外すといった清流復活事業が行われていたりもする。
下水処理場も「水再生センター」といった名称となり、川の水質は近年大きく改善されてきている。

そこへ、新宿区の試みは、汚染や洪水を経てただの「水路」と化してしまった東京の都市河川に、「遊び場」としての役割を再び与えようとする、画期的なものだといえよう。


受付で記名して番号札を受け取り、親水テラスの階段を降りて、川の中に足を踏み入れる。上流は、JRの高架下あたりから川幅は狭くなっているが、立ち入り可能なエリアは幅も広くフラットで、水深も20 cm 程度と浅い。


水は想像以上にきれいで、においもほとんどしない。すぐ上流には落合水再生センターがあり、下水が高度処理され流されている。

下流を望む。このあたりの河床はコンクリートで固められていた。もう少し下流なら、自然の基盤岩も見られるかもしれない。

網の貸し出しも行われている。この日は落ち葉くらいしかすくえるものはなかったようだ。日によっては、ドジョウやエビがよくみられるという。

受付デスクには神田川に生息するスジエビも展示。

こどもから大人まで、だれでも歓迎。

電車から。向こう側の線路の下。まさかこんな都会のど真ん中で、神田川で、水遊びができるとは。

今年の開放は7/21から8/12まで。
天気によっては入れない時もあるが、それも仕方ないこと。上流のどこかで豪雨が起こると、神田川のような都市河川は急激に増水するので、特に注意しなければいけない。
なお、新宿区のスタッフが天気予報を常時チェックし、また何人もの監視員を配置して安全への配慮を注意深く行っているから、安心して利用できる。

東京の川はキタナい、というイメージがひっくり返る。
この体験を、ぜひ多くの人にしてもらいたい。

2012年4月26日木曜日

EGU 2012 General Assembly – Vienna, Austria

European Geosciences Union (EGU) 2012 での発表のため、ウィーンへ。


10,000人以上の参加者で賑わう巨大学会。
AGU(参加者2万人超)に次ぐ地球科学の世界会議だ。
今年は水曜夕方の時点で既に過去最高の11,000人をマークしたとのこと。


ポスター会場も大きく広がっている。
AGUはほぼ1つの広い会場にポスターが集められているが、こちらはそのような巨大なスペースがないので、わりと複雑に、倉庫(建物のつなぎ部分?)のような場所も活用して設置されている。お陰で場所によってはちょっと暗い。
口頭発表セッションも多くの部屋で行われていて、リング状の会場をぐるぐる回って移動する。よく迷う。

EGUはSNS(Twitter, Facebook, Google+など)も積極的で、会場にいてもTwitterで情報が得られるのはそこそこ役立つ。問題は、会場のフリーWiFiがほとんど使い物にならなかったこと。多くの人が一斉に使い込んでいたからだろうか。ポスターセッションが始まった途端に接続が回復した。

ドイツからの参加者が圧倒的に多いが、ヨーロッパ全土から人が集まっている。もちろんその他の地域からも。
自分の発表したセッション(地上レーザスキャンについて。やはりこちらはテクニカルにも応用事例的にも進んでいる。というか日本での普及が遅いだけか)では、地元オーストリアからのグループが大勢いた。英語が第1言語ではない人がほとんどなので、気分的にも少しラク。お互い不慣れな英語でも議論が進む。

日本だと、英語がちょっと出来ると凄いとか、自分ムリとか、そういう雰囲気が少なからず漂っているようだが、少なくともアカデミシャンの世界ではそのような考えは見受けられない。英語が全てではないことは勿論で、それも承知のうえ、科学の共通言語としての英語をある程度使えること、あるいは使えるようになろうとすることを当たり前と受け止めたい。えっと、要は、自分もまだまだだなぁと。


ウィーン市街にはドナウ運河が隣接し、会場となるオーストリアセンターは東のドナウ本流と新ドナウを超えた先にある。その更に東には三日月湖(ドナウ旧流路、本流の直線化で取り残された)もあるらしいが、少し足を伸ばして見に行ってみようか。

2012年2月17日金曜日

アリゾナ大学訪問


現在進めている研究プロジェクト(津波侵食)のミーティングのため、研究チームでアリゾナ大学へ。
会議は順調に進み、充実したディスカッションができた。

この大学には、学内に大きな博物館・美術館がいくつもある。
たとえばアリゾナの歴史や、宇宙科学や鉱物の展示など。
有料で、入場料は通常5〜7ドルほどかかるのだが、それでも展示内容はその価格も安く感じるほど、充実している。
たとえば、ホンモノの鉄隕石や金の結晶、土器の巨大倉庫とその3Dカタログなど。
各々の説明にも深みがあり、かなり手の込んだものとなっている。
こんな施設が日本の大学にもあったら、凄く魅力的なのに。。

学内は多くの学生で賑わう。
そこら中に屋外のベンチや椅子、ソファが置かれており、本やノート、パソコンやiPadで勉強する姿があちこちに見られる。
土地の広さと、乾燥した気候のなせる技だろうか。
(それでも滞在中に偶然、滅多にない雨や雪にも遭ったが…)

2011年9月9日金曜日

Geomorphometry 2011 - Redlands, CA, USA

地形計測の国際会議"Geomorphometry 2011"に参加。
参加者数は思った程多くはなかったが、濃い内容は刺激になった。
今回はRedlandsのESRI Campusで行われたが、使うソフトは何もArcGISに限ったことではない。
Cで自作コーディングすることもあれば(それが基本だという研究者もいる)、GRASS、SAGAなどオープンソースのFOSS4GをRと併せてDEM解析に使いこなす猛者たちも参集していた。

それにしてもRedlandsは田舎。アクセスという意味では多少厳しいものがあったが、広い空間にゆったりと暮らすアメリカンスタイルもそんなに悪いもんじゃないと思う。ただ、クルマがないとやはりきつい。